関西でエネルギーを供給する大阪ガス。お話を聞くため、「ディリパ泉北」を訪ねました。私たちの生活に身近な企業は、想像していた以上に幅広く事業を展開されていました。
泉北高速鉄道の栂・美木多駅と泉ヶ丘駅の間にある「ディリパ泉北」。午前9時~午後5時30分、水曜休、堺市南区若松台3-1-5、℡072-296-3684
サービスショップにショールーム、ガス科学館で都市ガスがさらに身近に
大阪ガスは110数年も続く老舗企業。家庭や企業、施設へガスを届けています。ガス機器の購入や修理の相談などができるサービスショップや、実際にガス機器を見て、触れて体感できるショールーム「ディリパ」が各地にあり、私たちの暮らしをサポートしています。また、天然ガスや、地球環境について楽しく学べる広報施設も設けています。
2016年4月1日から、電気の小売業への参入が全面自由化されたことにより、電気の供給も開始。これをきっかけに自宅の光熱費を見直ししたい人に向けて、ライフスタイルにあわせた料金シミュレーションも実施しています。
最新ガス機器が並ぶ中で、一番目を引くのがガスコンロ。魚を焼くだけのイメージだったグリルは、パンやから揚げなどが自動調理できる機種も揃っています。
床暖房=フローリングのイメージが強い人も多いはず。なんと、和室でも設置が可能。温かい畳に驚きます。
泉北ニュータウンのまちびらきと共に開始した地域冷暖房
大阪ガスは、泉北ニュータウンがまちびらきをした頃から「地域冷暖房」に取り組んできました。関西では、2番目に導入されました。このエネルギーシステムについて、大阪ガス 近畿圏部 南部地域共創チーム マネジャーの杉本浩一さんに聞きました。
「地域冷暖房は、これから新しく作られる街や施設に適したシステムで、泉北ニュータウンを造るときに、省エネを実現できるエネルギーシステムを取り入れるために導入されました。これは、1ヶ所にまとめた吸収冷凍機、蒸気ボイラーといった冷暖房や給湯の設備で、冷温水や蒸気を複数の施設に供給するシステムです。泉ヶ丘駅前にある、泉北エネルギーセンターでエネルギーを作り、導管を通してパンジョ(ショッピングセンター)や、ビッグ・アイ(国際障害者交流センター)といった泉ケ丘駅の周辺施設に供給しています」。
泉北の人が何気なく訪れていた施設の裏で、約半世紀も前から省エネが実現していたとは。
まるで友達の家に遊びに来たような空間。リビング、ダイニング、浴室が設置され、ガスを使った理想的な暮らしを体験できます。特に自宅の新築・リフォームを考えているご家庭は参考になりそう。※自宅感覚で話題のミストサウナを体感できます。(事前予約制)
実は、暮らしの困り事や子育てについても真剣に向き合っているんです
「大阪ガスのGAS得プランでガス料金をご契約者のお客さまが月々216円(税込:修理対応は別途有償)で受けられる、“住ミカタ・プラス”というサービスがあります。例えば、換気扇を掃除したいとか、水漏れがするといった、急な住まいのトラブルに大阪ガスサービスショップが駆けつけ、一次対応を無料で行っています」。(大阪ガス 近畿圏部 南部地域共創チーム 南貴美子さん)
たとえば、エアコンの調子が悪い時にネットで修理会社を検索すると、なじみのない業者が多くて不安に感じることがありませんか。シニア層になるほど、暮らしの中で不便なシーンが増えてくるはずです。そんなときに、毎月コーヒー1杯分程度の料金で安心が買えるなんて、嬉しいサービスですね。
他にもガス会社というイメージからは意外に思える取り組みについて、南さんから教えていただきました。
「大阪ガスは自治体さまと“地域社会が抱える課題を解決するパートナー”になりたいと考えています。その一環として、市民活動を応援するNPO法人SEIN(サイン)さん、堺市、貝塚市、松原市にある子育て支援のNPO法人3団体と連携し『共同子育て』を提唱する“南大阪子育て支援ネットワーク”を立ち上げ4年が経ちました。まずは、泉北を始め南大阪各地で子育てをされている方と、子育てを応援する組織が対話をする“子育てトークカフェ”という場を設けました。リアルな子育ての悩みや課題を聞き、自治体さまや子育て支援の関係機関に発信しています。昨年からは、“公開円卓会議”を開催して、子育てを取り巻く社会課題である『貧困や虐待、子育てと働き方』などのテーマついて議論を続けています」。
近頃、保育園に入れない待機児童問題や、子育てのストレスを抱えている人が増えています。また、児童・幼児虐待がニュースになることもしばしば。子育て支援は、地域によってアプローチの方法は様々ですが、子育てに関わる人たちの交流が増えることで新たな発想が生まれ、快適に子育てができる社会になって欲しいと願うばかりです。
「子育て世代の声を聞き続けることからヒントを得て、近い将来にエネルギー事業にも活かすことができれば嬉しいですね。これからも子育て支援活動は続けていきたいです」
と、話していた南さん。お話を通して、「大阪ガス=ガス会社」というイメージから、「快適なライフスタイルを提案する企業」というイメージに変わりました。
今回の取材に対応してくださった、大阪ガス株式会社 近畿圏部 南部地域共創チームの南貴美子さん。消費生活アドバイザーでもあります。「南大阪子育て支援ネットワーク」でも活躍中。
万一の停電に備えて、ガスで発電できるコージェネレーションシステムを提案
泉北の未来のために大阪ガスが取り組んでいることについて、杉本さんは次のように語ってくださいました。
「“地域冷暖房システム”を導入している泉ヶ丘地区は、順次施設の更新が進みそうです。そのタイミングで、ガスで発電し、停電時も電気が使える“停電対応コージェネレーションシステム”の導入も提案しています」
東日本大震災の影響で東京が停電になった際、六本木ヒルズはこのシステムを導入していたおかげで電気が使えたのだとか。現在、一軒家に対応した同様のシステムをディリパ泉北などで提案しています。館長の清水剛さんによると、
「エネファームは、クリーンエネルギーである天然ガスから水素を取り出し、空気中の酸素と化学反応させることで、自宅でエコな電気を生み出す家庭用燃料電池です。電力自由化に伴い、エネファームtype Sは発電した電気のうち、ご家庭で使わなかった余剰電力を大阪ガスに売ることもできます。国が定めるエネルギー基本計画では、2030年には全国で530万台(日本全世帯の約10%に相当)の燃料電池の普及を目標にしていることもあって、泉北でも導入の提案に力を入れています。」
現時点では戸建てのおうちでの利用が中心のエネファームを、今後はマンションのような集合住宅でも普及させたいのだとか。
世界最高の発電効率。世界最小サイズの最新型「エネファームtypeS」。2016年に「省エネ大賞製品・ビジネスモデル部門 資源エネルギー庁長官賞」を受賞し、普及率は右肩上がりだとのこと。
また、ディリパ泉北の来場者の中にはリフォームを検討している家庭も多く、エネファームと合わせて、屋根に設置する太陽光発電、蓄電池を組み合わせる「3電池スマートハウス」を提案しています。自宅で使用する電力の約9割が自給でき、さらに太陽光発電分を売電できるので、経済的で環境にやさしいのがポイントだそう。
昨年は熊本地震、今年は九州北部豪雨があり、いつ天災に見舞われてもおかしくありません。近い将来、関西に南海トラフ地震が起こると言われていることもあって、防災に関心を持つ人が増えています。泉北が、天災でエネルギー配給がダウンしてもエネルギーの地産地消ができる、災害対策の万全な地域になれば、安心安全な住みたくなる街として活気づく日が訪れるはずです。
■コメントを頂いた方
◎大阪ガス株式会社 近畿圏部 南部地域共創チーム マネジャー 杉本浩一さん
今回の取材では、泉北ニュータウンの地域冷暖房について話してくれました。普段はガスについてはもちろん、南大阪の自治体と共に新たな取り組みを創り出していく共創チームに所属しています。
◎大阪ガス株式会社 南部ショールーム館長 清水剛さん
ディリパ泉北勤務を経て、大阪市内、京都で行政の仕事に携わる。2017年4月から、館長としてディリパ泉北に復帰。
お知らせ
大阪ガス「和食だし料理講座」泉北のめぐみいただきます!
〜和食だしを使って泉北の魅力を味わいつくしましょう〜
10月22日(日)、11月26日(日)、12月10日(日) 10時30分〜13時30分
(各回お料理内容は変わります)
和食の味の決め手となる滋味豊かな本物の“和食だし”を使った料理講座と、泉北産の食材を使った親子クッキングを、共催します。対象は、保護者と小学生(保護者1名につきお子様2名まで)です。詳細はこちら→http://www.osakagas.co.jp/company/efforts/so/topics/1265667_36461.html
【取材後記】
人の魅力が街の魅力につながる
今回、お話を聞いた清水さんは、今春にディリパ泉北の館長に就任するまで、大阪市内や京都で行政施設の管理の仕事をされていたそう。その一環として、地域の活性化に携わっていたとか。そこで、泉北ニュータウンの活性化について聞いてみると「人がカギになると思うんです。泉北には、こんなおもしろい人がいるとPRをしたり、特技を生かしてイベントを開催したりして、泉北内外に訴えかけるといいと思いますね」。とアドバイスをいただきました。杉本さんや南さんも「泉北の人は暮らしを向上しようとする意識が高い」と話していたので、泉北産のモノだけではなく、人の魅力も伝えることで、街の活性化につながりそうです。
◎市民ライタープロフィール
八木やす子
キャンディーメーカーで商品企画の職に就いた後、2005年から、フリーペーパーなどでライターとして活動。主婦でもあるので、ガスは料理などで毎日使用。子供のころから、ガスで炊いたご飯が一番おいしいと信じています。大阪ガスの「ガスてん」には何度も足を運んだことあり。