お部屋探しをしたことがありますか?住宅情報サイトなどで、物件を検索したことがある方ならURという名前の建物をたくさん目にしたこともあるでしょう。URの正式名称は「独立行政法人都市再生機構」。通称で「UR都市機構」と呼ばれています。団地をはじめ、全国に約76万戸の賃貸住宅を管理しています。
今回は、UR都市機構の浅見隆俊さんにお話をうかがいました。浅見さんは「団地のことを知らないことにはその良さを伝えられない」と泉北ニュータウンをはじめ、南大阪エリアの団地を中心に自分の足でまわっていらっしゃいます。
浅見隆俊さん
UR都市機構 西日本支社 大阪エリア経営部 企画課主幹。泉北ニュータウン圏内を中心に賃貸住宅のPR等を担当。(50周年事業には、市民委員・西恭利さんの企画「暮らし はたらき つながる箱」プロジェクトのパートナーとして参加)
「ヤギさん除草」や「鷹匠活用」など、全国から集まるノウハウで住みやすくをおもしろく
世の中にはたくさんの賃貸物件があります。UR都市機構が管理する物件の強みとは一体何でしょうか。そのあたりを単刀直入にお聞きしました。
「全国組織という点です。リノベーションや、既存のストックに新しい命を吹き込む方法、手法などを全国的にいろいろ試みているので、そのような成功事例のノウハウを各事業に反映できることが強みです」
“新しい命を吹き込む”とは、ワクワクする言葉ですね。わかりやすく説明していただくと、どのようなことなのでしょう。
「とりわけてユニークなものに、津久野南団地(堺市西区)で実施した『ヤギさん除草』という取り組みがあります。文字どおり、ヤギが草を食べて除草をしてくれるので、エコであるのはもちろん、共益費の節減、それから子どもたちに動物とのふれあいの場を提供しています。これはもともと東京の団地で試験的に行っていた取り組みを、西日本でもやってみようということになり実施したもので、3年ほど続けています」
「ヤギさん除草」では、1ヶ月ほど放牧して草を食べてもらいます。
「また鷹匠さんに来てもらって、団地付近に鷹を飛ばしてハトを脅かし、ハトがベランダに近寄らないよう対策している地域もあります。近隣だと金剛団地(富田林市)で行っています」
礼金・仲介手数料・更新料が無料であるなど、住み始める人にも住み続ける人にも優しいUR都市機構は団地のユニークな活用や魅力を発信する企業でもありました。
高度経済成長を支えた計画的なまち泉北ニュータウン
50年前に泉北ニュータウンがまちびらきをした時から、駅前やバス停の近くなど、非常に便利な立地に建っていたUR賃貸住宅。それらの住宅はどのような経緯で建てられたのでしょうか。
「高度経済成長期に、都市部に集中した家族世帯に家をまかないきれなくなったので“団地を建てて補っていきましょう”ということで建設が始まりました。泉北ニュータウンは、他のニュータウンなどと比較してもかなり計画的に造られていると思います」
「もともとの丘陵地の高低差をうまく利用して、整然と歩車分離された道路及び緑道や、泉北高速鉄道がすべて高架になっているのも、踏切などの遮断による車の渋滞を防ぎましょうということなのです。さらに、公園や緑地帯を広くとってあり、これだけ緑地面積が広いニュータウンは数少ないのではないでしょうか」
新檜尾公園
団地と泉北の暮らしを見学できるバスツアー
高度経済成長を支えた大黒柱が、リタイア世代・シニア世代となって成熟した感のある泉北ニュータウンですが、一方で、若年世代・子育て世代の入居を増やして団地ににぎわいを取り戻したいところでもあります。
そこで、泉北ニュータウンとUR賃貸住宅の魅力を発信するために堺市やフリーペーパー「まみたん」と連携したバスツアーが開催されました。
バスツアーでは、大阪府立大型児童館ビッグバン、子育て広場などを紹介し、URのリノベーション住戸を見学。最後は城山台の集会所をDIYしたキッズルームで座談会が実施されました。参加者のみなさんは、レジャー感覚で参加されていたようですが、アンケートを読むとニュータウンの暮らしに関心を持たれた様子。「団地の見方が変わった」「次の引越し先の選択肢に泉北ニュータウンが加わった」という感想もありました。
40数名の子育て世代が参加され、キッズルームなどを見学しました。
このバスツアーで案内されたリノベーション住戸について、浅見さんに詳しく教えていただきました。
「キッチンの面材や天板の交換などのキッチンリフレッシュ、洗濯機置き場に防水パンをつける、洗面台をシャンプードレッサーにするといった水回りの基本的な設備を見直しています。3DKのお部屋を2LDKに変えてゆったりとした間取りにしたり、畳敷きの和室をフローリングの洋間に変更したりするなど今の生活様式に合わせています」
リノベーション住戸のキッチン
さらに、特にPRポイントとなる特徴をうかがうと、清掃や安全に関することが挙がりました。
「共用部分の管理はクリーンメイトさんが毎日お掃除などをしてくださっているのでいつもきれいですし、安全面でも新耐震基準に満たない物件は順次補強しています。今までの二度の大きな震災でも建物の崩壊などでの死亡事故はありません。住みやすさはもとより、安心・安全も誇りです」
多世代が交わりながら、「しゃあないな」と言えるコミュニティづくり
泉北ニュータウンの暮らしやコミュニティを考えるとき、特徴のひとつに挙げられるのは、まちびらき当初に建てられた中層階段室型と呼ばれる団地についてです。建物の高さが5階以下で、隣り合う2戸で1つの共用階段を利用するつくりになっています。そのつくりならではの良い点があると、浅見さんは教えてくださいました。
「中層階段室型では、同じ階段を利用するのは最大で10世帯です。すれ違ったりして一度くらいは挨拶もするでしょう。顔が見えるご近所づきあいをすることで、良い意味でお互いに“しゃあないな”という寛容な部分が生まれると思うんです」
なるほど。多少の生活音も、どんな人が立てているのか、わかっているのといないのとでは、受け取り方が違うというのは想像に難くありません。余談ですが、浅見さんご自身のプライベートでも、阪神淡路大震災をきっかけに、ご近所づきあいが始まり、みんなで集まって何かしようという気運が高まった経験をお持ちです。
「地域に関わりがあるほうがセカンドライフに生きがいを見つけやすいですね。泉北ニュータウンは特にリタイア世代・シニア世代が多くなってきています。部屋に閉じこもりがちにならないよう、地域で外に出ていただくきっかけをつくることが恒常的にできるようになれば、なおのこと暮らしやすくなるのではないでしょうか」
そう言われれば、かつての暮らしのなかには「ちょっとお醤油貸して」など、頼りあえるご近所同士のつながりや、地域の関わりがあったという話はよく耳にします。
たしかに、暮らしやすいまちには「多世代の交わりと人の循環」があるように思います。つまり、泉北ニュータウンで成長した世代が子育て世代となって新しい所帯を持って帰って来る→自分の小さい頃の思い出の場所や体験を共有しながら子育てができる→共働きでも近所にはおじいちゃん・おばあちゃんが住んで見守ってくれている→子育て世代が安心して働ける→シニア世代がお孫さんの成長に伴い地域に出てまちとつながりを持つ機会が増える→子どもはいろいろな大人との関わりのなかで思い出をつくり成長する→大人になり愛着のあるまちに帰ってくる、というような循環です。
どの世代にとっても住みやすいまちであるように、と考え続けることを出発点とすることで、このような循環が巡り、さらに暮らしやすさが続いていくのだと思います。UR都市機構がめざす泉北の未来もその循環を意識したものです。
「泉北に帰って来られる子育て世代だけでなく、泉北に魅力を感じて新たに住み始められる若年世代・子育て世代も、ここを愛してずっと住んでおられるシニア世代とうまく混ざり合っていただければ、今後、より一層、誰もが生き生きと暮らせるまちになっていくはずだと思います」
「そのため若年世代にも入居していただきやすいように、UR都市機構では契約者が35歳以下の方なら「U35割」、二世帯で泉北ニュータウンにお住まいになられる場合には「近居割」などさまざまな制度を導入しています。多様な世代が交流し、元気なまちになるために多少なりともお役に立てれば嬉しいですね」
泉北ニュータウンで生まれ、育ち、老いるまで住み続けられる。また、新たに誰もが入居できるように多様な賃貸住宅を提供しているUR都市機構。
子どもから高齢者、障害者、外国籍の人まで「すべての人が安心できる豊かな生活を手に入れられる住宅」という私たちのニーズを満たすために次の50年を見据えて住宅も暮らし方も進化させています。
新たなライフステージの住居を選ぶとき、泉北ニュータウンのUR賃貸住宅も選択肢の一つに加えてみてはいかがでしょうか。
お知らせ
都市再生機構(UR都市機構)では泉北ニュータウン内だけでも12団地8,000戸余の賃貸住宅の管理及び募集を行っております。本文中のリノベーション住宅はもちろんDIY住宅など、住宅の型式もワンルームタイプから大型の4LDK住宅まで多彩な住宅を取り揃えております。
また、本文中にもございます近居割ワイドやU35割、そのママ割などの割引制度により、よりご入居しやすいさまざまな制度がございます。もしご興味をお持ちいただけましたなら、ぜひ一度当機構の募集サイトをご覧いただければ幸いです。
https://www.ur-net.go.jp/chintai/kansai/osaka/
◎取材後記
障害者にも優しい年金暮らしでも借りられるUR賃貸住宅
将来的に住む家を探している最中に取材させていただきました。車椅子で生活している私の(障害)年金だけでも借りられる物件はないだろうかとHPを拝見していたところ、申し込み資格において障害者への入居施策も考えてくださっていることがわかり、大変嬉しく思いました。また比較的バリアフリー化が進んでいるというお話も伺え、個人的にも大変有意義な情報を頂戴しました。じつは、幼少期をUR住宅で暮らした経験があります。生まれ育ったURの住宅でまた暮らす日もそんなに遠くないかも知れません。
◎市民ライター・プロフィール
下村信子(しもむら・のぶこ)
鶴山台(和泉市)の大規模団地で生まれ育ち、大学卒業後泉北ニュータウンに移住。初めて見た立派なケヤキ並木の美しさに「まるでドラマの風景みたい!」と感動した日を忘れることはありません。30歳を過ぎて、病気により車椅子生活へ。身体は不自由ながら自然豊かな公園の中に住まい、四季の移ろいを楽しめる泉北ライフを満喫中。