こんな思い、ありませんか?
あなたは毎日の暮らしの中で、“もっと通勤時間が短ければ、子どもと遊ぶ時間ができるのになあ、趣味に使える時間が増えるのになあ”と思ったことはありませんか?
あるいは反対に、時間の自由は利くけれど、やりたかったことや仕事を始めるには“場所や資金もなく、実現するのは難しいなあ”と行き詰まったことはありませんか?
そんな時、誰に相談していいかも分からず、ただ時間だけが過ぎ、このまま変化のない生活が続くのかと焦りを感じることがあったかもしれません。
今回、そういった方に、泉北ニュータウンで始まろうとしている「暮らし はたらき つながる箱」プロジェクトをご紹介します。
なんとこのプロジェクトでは、自然に近い泉北ニュータウンの環境で仕事も暮らしも両立し、より豊かな暮らしを実現する人を増やしたいという思いから、 コワーキングスペースを開設しようとしているんです!その場所は、既存の空き家や空きスペースを活かした、空間と人を結びつけ仕事を生む“プラットフォーム”となるものです。 (ここでいうプラットフォームとは基盤になる環境や拠点のことです)
そもそもコワーキングスペースって?
聞いたことはあるけれど、どういった場所なのかまではご存知ない方が多いのではないでしょうか。「コワーキングスペース(Coworking Space)」とは事務所スペースや会議スペースを共有しながらも、それぞれが独立した仕事を行うという共同ワークスタイルのことを言います。一般的なシェアオフィスやレンタルオフィスとは違い、個室ではないオープンスペースで仕事をするため、利用者同士が交流しやすく、互いにアイデアや情報の交換をすることで仕事に貢献し合うなど、相乗効果を目指した場であることもひとつの大きな特徴です。
様々な業種や職種、フリーランスといった多様な人材が、コワーキングスペースを活用しています。近年では、在宅勤務の働き方を積極的に取り入れる企業も増えたことで、こうした場所を共有しながらも、それぞれの仕事や目的に合わせて自由な働き方ができるスタイルとして、世界でも広がりをみせています。そんな新しくて理想の働き方が実現できるコワーキングスペースが今、泉北ニュータウンで生まれようとしています!
仕掛けているのはこんな人!
「暮らし はたらき つながる箱」を始めたのは、泉北ニュータウン歴15年、一級建築士として中古住宅や施設などのリノベーションを手がける傍ら、地域おこしの活動にも数多く携わる西恭利さんです。西さんいわく「高度経済成長を経て50年、ベッドタウンとしての役割を果たしてきた泉北ニュータウンが、近年の人々の暮らしの変容により、“豊かに暮らす”をテーマに、まちとしての役割も変わっていかなければならない。地域の少子高齢化問題や人口減少を解決するには、泉北で活躍するプレーヤーが、新しい企画や仕事を実践し、「職住近接」の暮らしを実現することが、地域の中で循環する新しいニュータウンの形となって行くように思います。」
このプロジェクトでは、新しいことを始めたい方はもちろん、生活スタイルや働き方を変えたい方、個人で仕事をしているけれど、もっと色んな広がりが欲しいと考える方が利用できる、地域に開かれたコワーキングスペースを開設します。
西恭利(にし・よしと)
和歌山県串本町生まれ。大学で建築を学び、設計事務所やハウスメーカーに20年勤務した後、「自分の考えを建築で社会に問うてみたい」との思いから、2013年に「西紋一級建築士事務所」として独立。既存建築ストックを活用した住宅や建築リノベーション事業を手がける傍ら、堺市の地域活性化やリノベーション促進の地域再生プロジェクトにも参画。「だんぢりキッチン」や「リノベ暮らし学校」など、ソフト面とハード面の両方から、リノベーション物件での職住一体の暮らしと地域の楽しみ方を提案。結婚を機に移り住んだ泉北ニュータウンで、妻と子供3人と泉北の暮らしを楽しみ中!
そこでは多目的の人が出逢い、仕事が交わり合い、互いに影響し合い、群れるでもなく依存し合うでもなく、いつも新鮮な関係で関われることを大切にしています。それぞれの可能性を大切にしながら時と場を共有する“プラットフォーム”を作ろうとしているのです。そして、活躍するプレーヤーの更なる拠点となる「箱」として、泉北の既存ストック(空き家・空きスペース・施設など)を紹介し、リノベーション提案から施工までハード面もサポートすることで、職住一体となった理想の暮らしを実現する人を増やそうとしています。
つまり、そうすることでベッドタウンとしてのまちから、暮らしの楽しみと仕事が循環するまちへと変わっていくのではないかと、西さんは考えています。
また、ソフト面では「だんぢりキッチン」なるものがカギとなります。元々はイベントなどで泉北産の野菜たっぷりのカレーをリヤカーに乗せて販売し、参加者との交流の場を作っていましたが、本当の目的は地域のお祭りの役割のような「縦と横をつなぐためのシェアキッチン」というのが役目なのだとか。コワーキングスペースを利用するメンバーが休憩時間に、時にはみんなで料理をし、テーブルを囲んで食事をし、リラックスした会話の中で思わぬアイデアがひらめき広がる。年齢や職業の垣根を超え、そんなワクワクする時間も共有することが、特別な日だけではなく、いつも暮らしの近くにある働き方って、素敵じゃないですか?
イベントではない。暮らしの傍にあってこそ価値がある
そんな理想的な働き方がこの泉北では実現可能だ!ということを体験してもらうべく、先日ある企画が行われました。
泉北の自然に近いロケーションをコワーキングスペースにしたいと考える西さんは、街中にありながらも四季を身近に感じられる新檜尾公園のど真ん中に、吉野杉を使ったオフィステント(仮想オフィス)を建てました。
その木製の枠組みのスケルトンな「箱」を目指し、思い思いの「目的」を持って集まる参加者たち。パソコンを持ち込んで仕事をする人、趣味にいそしむ人、会話を楽しむ人、家族との時間を楽しむ人、音楽を奏でる人、食事や飲み物を提供する人。集まったメンバーは、初めましての方も、旧知の仲間もありましたが、みなさん不思議なほどに自然体。その訳はやはり「箱」の存在にあるようでした。
箱があることでまず「そこで自分は何をしよう・何ができるだろう」と考え、目的を持ち寄ります。そして目的に対して「仕事につながるヒントやチャンスが見つかったり、自分を生かし生かされる何かがあるかもしれない」という期待感が生まれます。しかしそれはイベントのような刹那的なものではなく、この中でこれからもゆっくりつながり育てていくものだという、箱があるからこその安心感から生まれているように感じました。
参加者の一人は「大学で建築とコミュニティについて研究しています。泉北生まれで子どもの頃にはこの公園でたくさん遊びましたが、その頃にはこんな素晴らしい公園だったなんて気付きもしませんでした。今思えば有り難い環境ですし、こんなにも色んな人材や取り組みが集まっているなんて本当に凄いです!また帰ってきたくなりました!」と嬉しそうに言います。
離れてみたり、親になったり、色んな人とつながることで、それぞれの立場や環境による気付きが、ここでの活動で生まれ、仕事につながり、このまちの可能性を無限に広げることにもつながります。今回の「箱」は1日限定のものでしたが、常設のコワーキングスペースができれば、こうしたみんなの思いが集結する拠点として、また自然と職と生活が一体となった暮らしが実現できるモデルケースとして、大きな役割を果たすことと思います。早速今回の企画の中でお仕事につながった方もいらっしゃったようで、つながるスピードの速さもコワーキングスペースの醍醐味として感じることができました。
これからの泉北ニュータウンはどう変わって行くのか
西恭利さんがこのプロジェクトを始めた背景には、大学卒業から20年間、設計事務所やハウスメーカー、工務店などで勤務する中で、社会のあり方が大きく変わり「新しいものを作る」時代から「古いものを活かす」時代への転換期を経験され、家やまちづくりにも同じような方向転換が必要だと強く感じた原体験がありました。
「この泉北ニュータウンにも培われてきた50年の風景があり、他にはない自然豊かな公園や緑道、この土地ならではのたくさんの畑の恵みを味わうことができる。すでに多くのストックがあるにも関わらず、それを壊して新しいものを作ることより、そのもの自体を活かし今によみがえらせ継承することを、何より大切にしたかった。緑溢れる公園に隣接し、農に近い住環境を活かした暮らし、そして仕事ができる環境を整え、地域としてのエリア価値を上げる。そうすれば、循環するまち、持続するまちとして、この泉北ニュータウンは生まれ変わります。そのためにはまず、自分たちがこのフィールドで楽しんで生活することが一番です!」
西さんの活動や暮らしぶりを通して、このまちにはすでに培われてきた多くの財産があると気付きました。泉北ニュータウンの豊かな土壌で、家族との時間や趣味の時間を大切にしながら、自然との関わり(癒し、農など)を身近なものとして無理なく生活に取り入れ、尚且つコワーキングスペースのような開かれた場を通じて、コミュニティの中に暮らしの楽しみと仕事の広がりを見出すことができる。「職住近接」というハードルを越えるために、西さんが築き上げて行こうとされているプラットフォームが、益々大きな役割を担うことと思います。
そこには、いつも完成形ではなく、関わるに人によって変化できる空間を残すことで生まれる、化学反応をも楽しむ余裕があるでしょう。それは、建築士として長年培って来られた経験や、人とのつながりを大切にして来られた西さんだから作り出せるものかも知れません。変化を楽しめる仲間と一緒に、個々の可能性を大切にしながら、時と場を共有し育て、理想の暮らしを実現していく。公園に集まった方々の表情からも、そんな場所を熱望する思いがひしひしと伝わってきました。
西さんの夢は、60歳、70歳になった時、珈琲を淹れながら、泉北のまちの移り変わりをみんなと語り合うことだそう。その夢の第一歩として、泉北の緑豊かな環境の中で、畑もできるコワーキングスペースの開設を目指します。
51年目を迎えるこのまちに、“プラットフォーム”となる場所が、西さんをはじめみんなの手で作られ、泉北ならではの豊かな暮らしを実現する人が増えていくことが、今から楽しみでなりません。
お知らせ
西さんの今後の活動についてはこちら
<西紋一級建築士事務所HP> https://www.saimon-live.com
<だんぢりキッチン> http://senboku.wp.xdomain.jp/team/dandiri-kitchen
◎市民ライター・プロフィール
井上里紗
兵庫県出身和泉市歴5年。イベント制作会社や飲食店勤務などを経て、現在は専業主婦として6歳・3歳・1歳の子育て真っ只中。転勤族がゆえに全国各地の様々なコミュニティを経験できるライフスタイルを楽しんでいます。今後は市民ライターで学んだ発信する力を、これから出会う魅力ある人や取り組みを紹介することに活かして行きたいです!